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お薦め小説−文庫のお部屋

ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』(1933)
George Orwell, Down and Out in Paris and London

 本書はパリの労働者階級の生活編とロンドンの浮浪者の日常編という2編で構成されています。
 物語は"わたし"が住むパリのスラム街の描写から始まり、パリの労働者階級の日常生活や主人公が徐々にどん底生活に陥っていく様子に引きこまれる。
 ただ気をつけてほしいのは、この小説(ルポルタージュ)の舞台となった時代は 1920年代後半ということです。世界の情勢としては大恐慌の真っ只中で、日本は昭和が始まった頃。アメリカでは、禁酒法の庇護のもとシカゴでギャング団が活躍していたという、まさに暗黒の時代です。
 そのせいか、パリの中心的舞台となるホテルXでの、カフェトリー係(皿洗い)の仕事についての話は、薄暗い地下の温度が40度以上になる調理場で長時間労働をするさまは、重苦しく暗いイメージを伝えています。
 次の舞台であるロンドンでの生活は、安宿の代金もなくなりスパイク(浮浪者臨時収容所)での生活とパリのそれよりも落ちぶれているが、各地にあるスパイクの放浪が中心なので、パリでの皿洗い生活よりも気分的にはすっきりした印象。でも、スパイクで一夜を過ごすのは…。
 それぞれの国で“わたし”の相棒になる人物も魅力的で、一度読んだら忘れられないでしょう。パリ生活の相棒は楽天家の元ロシア軍人でウェイターのボリス。ロンドン放浪の相棒は浮浪者の典型的といえるアイルランド人のパディ。これらの人物を介して貧窮生活というものにリアリティをもたせている。
 パリ編での街やホテルの名前は変えたり伏せたりしているが、オーウェルが実際に働き住んでいただけに現実味が増します。ロンドン編の浮浪者生活も疑似体験をしている気持ちさせる。
 オーウェルは自身を貧困とゆう場に置き、その実体験の上で貧窮が人間に与える影響を克明にあらわしている。(実際は、生活基盤がある上で2・3日の浮浪者生活を繰り返していたのだが)
 半古典文学として傑作だと思う。

>>>> 岩波文庫 赤262-2

レイモンド・E・フィースト『リフトウォー・サーガ』(1982-1992)
Raymond E.Feiste, Rift War SAGA

 『魔術師の帝国』(Magician)、『シルバーソーン』(Silverthorn)、『セサノンの暗黒』(A Darkness at Sethanon)、『王国を継ぐ者』(Prince of the Blood)、『国王の海賊』(The King's Buccabeer)のリフトウォー・サーガ5部作について予定しています。お楽しみに・・・

>>>> ハヤカワ文庫FT FT60-61,98-99,107-108,208,215-216


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