"My Pure Lady" Junko Sakurada

桜田淳子 対談

週刊平凡(1985.06/22号)より
「橋幸夫凡子の占い二人三脚」 第10回 桜田淳子

 みてもらったひと 桜田淳子
 占った人 橋幸夫
 インタビュアー 橋凡子

 

淳子 はじめまして。お手やわらかにお願いします。

凡子 ご安心なさって。すばらしくいいんですよ。

淳子 今年が、ですか? 今年よくないんです、私。神様が私のこと忘れちゃったんじゃないかって寂しい気持ちになることがあるんですけど。

淳子 ウフ……まだだいぶありますね。

凡子 歌は?

淳子 もううたいません。

凡子 あっ、それがいいの。歌手力ムバックは凶と出てるの。いいにくいけど、歌の天分にはあまり恵まれてないって……。

淳子 もうその気ありませんから。ま、ミュージカルでうたうことはあるでしょうが、歌手・桜田淳子としてレコードを出すことはまったく考えていません。

凡子 じゃ・もう全然未練は……?

淳子 はい。未練もなにも、自然にこちらのほうへ来てしまったでしょ。私ねえ、直感力とか、すごく強いんですよ。小さいころから、たぷんこうなるだろうなあと思ったことは必ず成就しちゃうみたいなところがあるんです。

凡子 じゃ、淳子ちゃんの将来のご希望は?

淳子 お芝居やっていきたいなあって漠然と……。デビューのころからなんとなく将来はそっちのほうへ向かうだろうなあって予感があったんです。

凡子 すごい! 橋の占いとピッタリ!(とメモを読む)「歌手はまったく不向きの運で、少女のころ自己を売り出すために必要な過去の道程である」んですって。こうもいってますよ。「今後の職業としては、女優一筋が理想であり、それが天分でもある。おそらく有馬稲子さんとか浜木綿子さん以上のなにかを持った人である。これしかない!!という信

念を持ってほしい」と。

淳子 なんだか恐ろしいなあ。

いまは充電期間。あなたは34歳過ぎたら70歳まで

休みなく馬車馬みたいに働かなきやならない

凡子 30代、正確には34歳からが最高にいいの。円熟味あふれ、実力、人気ともに上昇するはずだって。

淳子 でも、それは運をうまくつかんだ場合で……。

凡子 はとんど大丈夫です。ただ、注意しなきやいけないことがひとつあって、テレビタレントのようにマルチ的に生きようとすると運が消滅してしまうの。女優さん、最終的には舞台女優さんを目標に進んでくださいっていってました。

淳子 そうなんですか……。向いてたんでしょうか、こういう職業は。私、あんまり執着ないんですけど。

凡子 まあ欲のない……。女優は淳子さんの天職ですよ、偶然なったんじゃないんですよ。ただ20代の後半から30代の初めまで比較的恵まれないのは……私はけっしてそうは思

わないわよ……それは神様が与えたお休み、充電期間なんです。女優の勉強をいまのうちにしっかりしときなさいって意味じゃないのかしら。

淳子 そう、ですよね!

凡子 橋の占いだと、淳子ちゃんには24歳で大きな転機がやってきてるはずだと出てるんですが?

淳子 ですね。25歳過ぎてからドーンと重いものがのしかかったみたいで、いままでトントントンときてたのが急にこうストップかけられたみたいなんです。でも私には、こういうときいろんなことやっちゃいけないなってことが、なんとなくわかるんです。また、やろうと思ってもできないし……o

凡子 神様が、せっかくいまのうちに休んどぎなさいって人生の休暇をくださったんだもの、それに逆らったってダメ。まして、あなたは34歳過ぎたら70歳まで休みなく馬車馬みたいに働かなきやるらないんだもの。

淳子 エーッ、70まで! 喜んでいいのかどうか。あのう、失礼ですけど(とメモをのぞきこんで)ソレは?

凡子 ええ、橋がね、四柱椎命とか九星気学とかで一生懸命占ったんですよ。

淳子 統計学ですよね。私、信じます。

凡子 へンな話だけど、ウチの主人、淳子ちゃんにとっても関心があって……で、いちおう自分で占ってから先生に、神官寺観山先生とおっしゃるんだけど、これでいいでしょうかって確かめてみたんですって。そうしたら先生、おっしゃったそうですよ。「年齢を重ねるにしたがって隆盛に向かう、こんな強運な人も珍しい。いちど字が見たいからサインもらってきてほしい」って。

淳子 ア、ラ、ラ……なんか怖い!

 

恋愛って いずれは燃え尽きちゃうものだって気がする。こんな恋愛観、悲観的すぎますか?

凡子 ただねえ、ちょっと気になることも出てるの。

淳子 はあ……?

凡子 31歳のとき結婚運があるんだけど、淳子ちゃんはややもするとクタビレタ男性、少々ヤクザっぽい男性を好む傾向があるって出てしまったのね。

淳子 アラー!!

凡子 いい? 読みますよ。「したがって結婚は非常に難しい。50歳くらいまでに3回ほど結婚・離婚運が出ている。最初の結婚のとき、くれぐれも慎重に。淳子さんは男性に尽くして尽くしてといぅタイプ。最初尽くしがいのない人との出会いだと、以後もそういう男性との出会いばかりになりかねない運がある」って。

淳子 つまり尽くすことに生きがいを……? 当たってます。

凡子 いかが? さっそうと生きてるような男性に、あまり興味引かれないんじゃなァい?

淳子 ウーン。じゃ私はわりと生活オンチで何にもできないような男性に?

凡子 名前出しちゃ悪いけど、恋愛運はいしだあゆみさんタイプなんですって。

淳子 私、オトコ運あきらめてますから。女には、いくら家庭的な女になりたいとかしおらしく思っても、その人の持ってる運ってあると思うんです。

凡子(ちょっとあわてて)そんな悲観しないで。淳子ちゃんは最初の結婚さえうまくいけば、一生添い遂げられるとも出てるんですよ。つまり波の高低が極端なのね。

淳子 でも結婚に関しては、自分の芽というか幸運をあんまり信じてませんから。だから結婚は紹介かお見合いでって思ってます。周りにいいかたがいっぱいいらっしゃるので、その人たちが、アイツなら、って太鼓判押してくれるような人だったら……。恋愛もいいけど、お互い熱くなっているときは楽しいでしょうけど、ひとつでもイヤなところが見えると、私なんかとくに潔癖症だからもうイヤッノ ってことになると思うの。生きる目的が同じならいいんですが、価値観の違いがあったらもうダメだろうなって……。お金の使い方で、何に執着しているか、その人の人格ってわかっちゃうでしょ。それに恋愛というのは、いずれは燃え尽きちゃうものたって気がするんです。これから結婚するのに、こんな恋愛観、悲観的すぎますか?

凡子 そんな……。

淳子 私、よく監督さんなんかに、男なんてコヤシにしていけなんていわれるけど、とってもできない。無責任だと思います、そういういい方。私はひとつの恋を貫いて生きるのがずっと美しいことだと思うんです。

凡子 そうですよ! 淳子ちゃんをケシカケている監督さんも、家では自分の奥さんに貞操とか質素を要求してると思いますよ。

去年の11月からずーっと玄米を食べ、お風呂に入るときは必ず冷水浴びることにしてるんですよ

 淳子 私、マジメな人好き。いまの若い人はライト感覚とかいって、軟弱人間がウケているようですけど、どこかでマジメさにあこがれているって気しません? その証拠に、いま森田健作ブームとかいってるでしょ、アハハハ……

凡子 あっ、森田健作さんなんかどうですか?

淳子 私は森田さんのファンで、で、いまのプロダクション選んだんです。オレは男だ、青春を汚さず生きていこうみたいなキャッチフレーズに、とってもクリーンなイメージ持ってて。だから、あの人がいる事務所なら大丈夫だろうって。

凡子 で、どうでした?

淳子 私はこれまで事務所とのトラブルはまったくありません。本当にひとりの人間としてたいせつに扱ってくれますので。もしいまのプロダクションじゃなかったら、もうとっくに芸能界やめてるだろうと思います。信頼関係がないとダメなんです、私は。

凡子 で、森田健作さんとは?

淳子(アッサリ)それが全然お会いしてないんですよ。でも相変わらずスクエアな感じで、ひとつの道を貫いていらっしゃるようで、すばらしいことだと思いますね。

凡子 淳子ちゃんは同業の人と結婚すると出てるんだけど、心当たりありません? あなたが70歳になっても共演している男優なんですよ。その人と結婚する可能性が大なんですって。

淳子 へえー、だれだろう……。でも私、そんなに急ぎません。女性って子供を生まないと半人前だと思うんです。それが自然の摂理だと。この世に子孫を残す仕事があるって気がして。だから、遅くとも子供が生める年齢までに結婚できればいいなあって。

凡子 本当に自然体で生きてらっしゃるのねえ。まさか自然食主義者じゃないでしょうね?

淳子 それがじつはそうなんです。姉が結婚して、ご主人というのがとってもいい人で、私も一緒に住まわせてもらっているんですが、結婚してからというもの、姉が俄然健康にうるさくなりまして。私、去年の11月からず−っと玄米を食べ、お風呂に入るときは必ず冷水浴びることにしてるんですよ。寒いもんだからもうキャーキャーいいながら。

凡子 ウチもそう、去年から玄米米。といっても、玄米だけでは瞬発力が出ないと聞いたので3度に1度ですが。

淳子 アレ、毒素が全部出るんですってね。(と、このへんから話は俄然盛り上がりを見せる)最近はなんか白いご飯が虫みたいに見えてきま

凡予 オトイレがすごく気持ちいいんですよね、ウフフフ……。

淳子 不思議なんですよ、玄米食べるようになってから、外食するときもお魚オンリー。お肉はまったく食べません。野菜が大好きになりました。

その人がいると、周囲がなんとなくあったかくなるような、私、そんな人間になりたい

凡子 ほかにも体にいいこと、なにか? あら、コマーシャルみたいね、アハハハ。

淳子 時間があると最近よく山に登るんです。みなさんから見たら丘だって笑われるかもしれないけど小諸のほうとか大山とか。なんかすごくホッとするんです。凡子 きっと、そういう人工的でないものを求めてらっしゃるのよ。でも、そういう生き方してると、芸能界にいるのが苦痛じゃなァい? この世界はそれこそ魑魅魍魎が横行するところだから。

淳子 私たちって勘違いしてると思うんです。ちょっと自己中心的になりすぎてるんじゃないかって。考え方を少し変えれば世の中に奉仕したり貢献できるのに。……(いいよどむ)

凡子 芸能界って影響力強いですものねえ。中曽根首相がテレビで1時間話してもなかなか見てもらえないけど、『紅白歌合戦』は喜んで3時間見てくださるわけでしょ。それなのに、その力を神様のメッセンジャーとして使おうって人、少ないですよね。私なんか歌手も俳優さんもなぜその職業に選ばれたかを考えなきゃいけないって思うんですけど。

淳子 だから、いずれ、本当にそういう考え方を持った人とご一緒に仕事できたらなって思います。すごく安っぽい世界にしてしまうのが恥ずかしいんです。スキャンダルばっかり追いかけたり、追いかけられたり。大学まで出た人がマイク持ってそんなこと蘭かなきゃならないのもかわいそうだって気がするし。ごめんなさい、偉そうなこという気は全然ないんです。

凡子 偉いわ!

淳子 すこく年寄りくさいでしょ。自分で思うんです、私なんか昭和の初期のころに生まれてきたほうが幸せだったんじゃないかって。つねに問題意識を持って臨むとか、苦境に立たされるのがわりと好きみたいなんです。ドロ沼に咲く一輪の花でありたいなんて、できもしないことを考えたり。

凡子 意外だなあ。淳子ちゃんがそんな人生観持ってるなんて本当に意外。とっても自然で、とっても清らかで……。

淳子 でも、その清らかさが反発をくらうものじゃいけないと思うんです。修道女のような清らかさじゃ……。その人がいることによって、周囲がなんとなくあったかくなるような、私そんな人間になりたい。

凡子 女優やってると、淳子ちゃんが理想とする女性像とはまったく逆のキャラクター演じなきやいけないときあると思うんだけど?

淳子 はい。でもそういうときは、私には人を見下す部分があったからそれを直してやろうという神様のおはからいだと思ってやっています。今年こそ、自分のイヤな部分を変えたいです。

凡子 なんか今日は逆に教えられちゃったわ。あ、そうだ、最後に3人娘についてなにか話して。

淳子 百恵もゃんはむかしから温かい家庭望んでいたし、本質的には常識的な人だから家庭に入ってよかったなあって。昌子ちゃんには、勝手な意見だけどこれからも演歌一筋でやってほしいと思う。ライバルなんていわれたけど、いまいちばん気になるのは同じ道を歩いたあの2人のことなの。幸せになってほしいなって心の底から思います。

 

 

《対談を終わって》

 画面で見ると、とても気の強そうな感じを受けるんですが、実物の淳子ちゃんはとっても心の清いかたなんですね。主人の占いにも出ていますが、きっと24歳を境に優しさがどんどん出てきたんじゃないかしら。

 それと、周りにいいかたが多いらしく、芸能界にいながら、あまりお尻をたたかれていないようで、とってもすなおですね。このまま、すばらしい女優さんになってほしいわ。結婚相手は、ぜひまじめな人間を。あこがれだった森田健作さんなんておすすめですよ。  (凡子



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