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石川行政相談委員協議会機関紙『けん六』第11号(1996.3)に載せたものです。

 

あなたの命、いただきます

内灘町 藤島学陵

 テレビドラマの殺し屋でも言いそうな物騒な台詞の「お命頂戴」とよく似ている「あなたの命、いただきます」という言葉を、近頃、毎日3回は言っている。しかも家庭内でである。「あなたの命、いただきます」、「あなたの命、いただきます」、「あなたの命、いただきます」。

 歌手の坂本九が歌った歌謡曲『上を向いて歩こう』の作詞者である永六輔氏が『大往生』(岩波新書・1994)を書いた。その本が二百万部を越す売れゆきをみせ、今度はその続編として『二度目の大往生』(1995)が出た。その131頁に食前の「いただきます」という言葉に関して、《「いただきます」の本当の意味を知らなければいけません。「あなたの命を私の命にさせていただきます」−−肉だろうが、魚だろうが、米だろうが、麦だろうが、あるいはジュースだろうが、野菜だろうが、みんな生きていた命です。その「あなたたちの命を私の命にさせていただきます」の最後の一句、それが「いただきます」なんです。》とある。私のは、その影響だ。

 ある老人が言っていた。うちの若い者たちは孫に対しては「頼むから食べてくれ」だし、孫は孫で「食べてやる」だ。食べ物は口に入るのはあたりまえだという気持ちだ。食べ物への感謝の気持ちなぞあったものではない、とのことだ。

 より年輩の者がより若い者へと、他の生命に対する感謝の気持ちを持つことを、日常の生活の中で伝えてゆくことができるこの言葉は、非常に重要である。ただしかし注意すべきは、この「あなたの命、いただきます」という言葉はもちろん食事の前に言うのだが、両手を合わせて自分の前に並んでいる食べ物たちを見ながら言うということなのである。決して自分の前に座る人の目を見ながら言ってはいけない。

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