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SHOGO WordsStory

「路上裏の少年」 より

 
 昨日、親父を殴った。
 自分でも何故か判らないが最近、家人と衝突ばかりしてる。大人への苛立ち、社会への反感、どうしても押さえきれない様々な感情。そして何も出来ない無力な自分への怒り。
 そして昨日・・・。「あっけない」と云う思い。親父の目を見ることは出来なかったが、その1発で何かが終ったと、その時はそう感じた。右手のしびれがなかなか取れなかった。物理的傷みではなく心の傷み。一生忘れることはないだろう。眠れない夜、感情が高まっている。気が付くと古惚けた校舎の前に立っていた。
 次から次へと湧き出てくる言葉にならない単語。それを月明かりを浴びて真っ白に浮かび上がる壁に、殴りつけるように書いた。大きな影が踊っている。
 翌日、家を出た。
 駅の目立たない所に立ち、親父の姿を探した。幾分疲れたようなやつれて小さく感じる男が見えた。涙が溢れてくる。何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。・・・ホームに一人立ち尽くしている、オレ。
 親父は読むだろうか、決別(わかれ)の書き置きを。しかし、もうどうだっていい。ただの強がり、若さ故の甘え。オレにだって良く解っている。だが自分が決めたことだ。どんな理由があろうとも。でもこれからは自分の思うように生きて行きたい。
 さよなら・・・親父。路地裏のビルの隙間からのぞく蒼い空。ポケットのハーモニカ握りしめて。

 やっと、一人での生活にも慣れてきた。なんとか働き先も見つけることが出来、なにもかも新鮮で自由。
 中古で手に入れたフォーク・ギター。いつかTVで見たように、星空の下、窓にもたれ、覚えたばかりのコードを弾いた。
 一人で生きていくようになって、いろいろな考えが浮かんでは消えていった。幾分社会のことを知ったように思ったオレは、すさんだ世の中、この日本(くに)を変えてやると。
 翌日、理由も聞かされず仕事を解雇された。
 早朝の路地裏。自分でも解らない。何を探す訳でもなく、ポケットに手を入れ彷徨うオレがいる。

 ただ食うためだけに存在しているオレ。
 仕事はキツく、生活は辛い。朝から夜まで、働きづくめ。淡い希望など、ずっと昔に無くなった、捨ててしまった。自分は一体なんなのか。それさえ、考えることが出来ない。
 背中から脳天に抜ける脱力感。脇にある赤茶けた工場の高い壁に、倒れそうになって手を付いた。そして座り込み、頭を膝の間に入れうなだれてしまった。頭の中は空っぽで、ただこうしているだけで良かった。
 何もない寒い部屋のなかで、いつしか母親に手紙を書いているオレがいる。迷惑ばかりかけ、何度も泣いているのを見た。現在のみじめなオレの姿を手紙に書いている。泣いている母・・・脳裏に浮かんだ。
 翌日“元気です”と、それだけ書いた手紙を母親に出した。
 いつしか一緒に夜を過ごす人がいるようになったオレ。今は、それだけでいい。なにを求める訳で無く、お互いに慰安出来る人間が必要なんだと。
 夕暮れの狭い路地裏で、彼女の細い肩を抱きしめている。今は、ただそれだけ。

 口づさめば悲しい歌ばかり、届かぬ想いに胸を傷めて。
 “生きてゆく”ことの意味を考えれば考える程解らなくなる。先が見えない。
 陽も真上に昇った頃、あてなく歩き回って、行き止まった路地裏。
 

恋人達の舗道〜涙あふれて〜グッド・ナイト・トーキョー より

 
 何年かぶりに戻ってきた東京。学生時代、社会人になってからの数年を過ごし、時々心を吹き抜ける幾つもの想いを置いてきた都市(まち)、淡い時代の故郷と呼べるもの。
 東京の匂いをかいでまっ先に、心に・・全身を駆け抜けた想い。その想いを求めて、今僕はここに居る。

 「もう逢わない。理由(わけ)は言えない・・・」幾分、目を臥せた彼女が発した言葉。

 
 もっと早く「さよなら・・・」言えたなら、こんなに辛くはなかったのに
 忘れられるものならば最初から好きになったりしない
 


※このページの物語は、私が浜田省吾さんの詩を基にして創作したものです。
皆さんが思っている省吾さんの詩のイメージとは異なると思いますが
出来るだけ詩を尊重するように創ったつもりです。御了承下さい。

 

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