<<< 『旅のめぐり逢い』 >>>


ボクは待っている 北へ上る寝台列車を 閑散とした駅の待合室で
期待を感じる まだ見ぬ地への憧れに
不安を感じる 心の隙間を埋めてくれるのだろうかと

列車の寝台で目を閉じた 目覚めた時 目に入るものを楽しみに

ボクは見た 淡々と走る列車から外の景色を 朝の冷たさに目覚めて
雪が残っている 一面の田圃は 薄っすら白く
心が寒い 少しだけ でも 気配を感じる 春の暖かさの
何が見つかるのだろうか これから降り立つ土地で

ボクは歩いた 最初の目的地を でも残っている 冬のなごりがまだ
次第に感じてくる 暖かさを 柔らかい日差しを徐々に浴びて

再び乗った汽車には笑い声 どこか嬉しそうな 春間近な学生達

ボクはおもいっきり嗅いだ 冬と春の匂いが入り混じる潮風を
歩きまわった 海辺の小さな町 そして 心に刻んだ 空気 音 匂い
ボクは忘れない あの日観た 水平線に沈む大きな太陽を

汽車はゆっくりと縫って行く 白一色の大地を 人々を乗せて
この道の終着の小さな駅に着く そこはとてもあったかい世界
小さかった頃に返る だるまストーブ 列車を待つ人々に囲まれて

この地に来て初めての大きな街 人々のざわめきと幻想的な気分 
真っ暗な空から舞い落ちる雪 ネオンに彩られる雪 暖かい雪

小さくラジオをつけながら見つづけた 深々を線路とホームに降り積もる雪を
その時 時は止まっていた ボクの身体 ボクの五感 ボクの思考

汽車に乗り 生まれたところを遠く離れ そして 帰ってきた 汽車に乗って
心が包まれた 不思議な高揚感に でも すぐ解るだろう
答えがあった 汽車の窓から見る気配 そして心の感覚
この駅から この時間 この汽車に乗り 日常を始めていたのだ 旅に出る前まで
ボクは見つけたのだ 何かを・・・ そして 今 旅を終え
この駅で この時間 この汽車から降り 帰ってきたのだ ボクの生まれたところへ



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