ツバメとサイバードから(1) 後調べにて
サイバードを飛ばすようになって
鳥の事が判ってきた。

よく遊んでくれたツバメ達
彼らはイルカのように好奇心が強くて
のろのろ飛んでいるサイバードについてくる。

数羽で追いかけてくる所を見ると、「気持ちだけでも威嚇しているのかな?」と
最初は思った。
しかし、そばに巣があるとは思えないし…
彼らは渡り鳥で、確保したテリトリーを持っている訳でもないだろう。

そう思うと
見慣れないノロマな鳥、ぶきっちょで、一所懸命に羽ばたいている。
そんなサイバードに興味を持っているとしか考えられなくなってきた。

ある日、ツバメ達の大群が空を覆っている光景を目撃して、
居ても立ってもいられなくなり、サイバードを思いっきり彼らの中に
放り込んでみた。

すぐに数羽のツバメがついてくる。
友人に囲まれて談笑しているかのような幸せ感に包まれた。
ひょっとすると、巣立ったばかりのツバメが上手く飛べないのを
まるで…そう、まるで見守ってくれているかのような、そんな野性的本能に
包まれていたのかもしれない。

野生のツバメと触れ合う事で、やっと彼らの気持ちが判ってきたような気がする。
ツバメの事を調べていると、今までのモヤモヤが明らかになって来た。
「何故、人家に巣作りするのか?」

昔から、稲作の時期は害虫が発生し、ツバメ達は害虫を大量に捕獲して(人間からみれば駆除してくれて)いるのである。一方天敵であるカラスやネコ、アオダイショウから雛を守るには人のそばである人家や畜舎が一番安全で都合が良いという事らしい。

この事からツバメと人の間に、他人事で割り切れない、友情に似た関係を見出しても不都合は無いという事になるだろう。

ツバメとサイバードから(2) 隊列を組む事
ツバメ達に教えてもらったのはそれだけではない。
最高で時速200Kmもの速度で飛行できる彼らの羽ばたきは
この単純なロボットに素晴らしい知恵を授けてくれた。

離陸、着陸、ホバリングなどは到底真似のできるものではないが、
高速飛行時の羽ばたきは、局所的ではあるがサイバードの羽ばたきに
近くなるのではないか?という事。
人間が手のひらを閉じた様な状態で羽ばたいているのである。
一般に一枚一枚の羽根の隙間は上昇時に役に立つという事が知られているが、
高速飛行時は、まるでハチドリのような単純な羽ばたき運動になっているのでは
ないか?という事。でないと羽根がもげてしまうだろうし、スピードを出す事は
不可能だろう。

高速飛行中の上昇下降は尾翼も使うだろうが、加速時に尾翼に頼っていると
失速してしまい効率が良くないので、他の方法を利用している。というのが、
自分の最大の発見だった。
これはサイバード無しでは見つけることができなかっただろう。

詳しい説明は後ほど…
鳥が、隊列を組んで飛んでいる光景は、小さい頃から幾度と無く目にしている。小鳥達の場合は身を守る事に重点があって、列というよりは集団、団塊となって飛んでいるようだ。
が、やや大型の鳥となると、綺麗なV字型だったり斜め一直線に、まるで仲間たちが組んだ列が見渡せるような位置に身を置いているようだ。そこでハッとしたのは、大気や風の状態が、隊列の[膨らみ]や、[歪み]、[遅れ]などから、大域的に把握しやすいのではないかという事だ。仲間の列は、そのまま空気の状態を立体的・動的に描き出している訳だ…。渡航するのに有益な情報になるだろう。

ツバメは…単独で海を渡るそうだ。オーストラリア北部と日本を、一匹ずつ…。足が強くなく、水を飲んだり仮眠する時まで飛びながらということがあるそうだ。
サイバードの癖 空気を押す事
熱心な方は「原理」のページにて、サイバードには前転傾向の癖がある事を
肌で感じてもらえたかもしれない。

感の鋭い方は既に「前転傾向」の必要性に疑問をお持ちだろう。
鳥は常に、そんな不均等な力を必要としているだろうか?
これではまるで、糸の付いた凧のように
あまりにも不自由ではないか?

まさにお察しのとおり
自ら生み出したバランスに束縛されて、自由には飛べなくなっている。
それがサイバードの癖

では、どうすれば自由を得られるのか?

それはサイバードを超えた理屈であって、
市販製品では実現されていない部分だ…

しかしながら、
糸の切れた凧をどう操るかも問題なのである

「挑戦」のページにてその一端を垣間見て欲しい

ツバメ(鳥)は筋肉で身体をねじったり折り曲げたり反らしたりと、非常に柔軟に主翼と尾翼を使いこなしている。
高速飛行中は、この動作は小さくなる…と言うか僅かなひねりで十分になる。速度を落とさずに方向を修正しようとした場合、最も効率的なのは推力となる羽ばたきに僅かな変化を加えれば可能になるのだ。その変化とは…
「羽ばたきの位置をずらす」という事。それにはいくつか特徴的な方法が存在する。主翼が生み出す推力には右の翼と左の翼という双発機のような構造があるが、片方の翼から少し力を抜く、あるいは片方の翼に、より力を加える事で左右方向への推力の偏りが出てくる。それだけではなく、羽ばたきの上限と下限を移動させる事で今度は上下方向への偏りが現れてくる。この時、尾翼は舵としてではなく、単に姿勢を安定させる補助翼のような役割で十分なのだ。
つまり推力の中心点を上下左右にコントロールする事で、速度を落とさずに方向転換する事が実現出来る訳である。


2005/9/23