労働相談事例   


  1.労働契約と委託契約 ― 労働者性    
     
    問、   アニメ制作会社と20万円でアニメ制作の委託契約を結び働いています。会社の指示を
        受けながら従業員と机を並べ一緒に働いています。期限に追われ毎日、残業続きです。
        残業手当は請求できませんか。

    答、   労働基準法は、契約の形式にとらわれず、労働関係の実態に則して判断され適用
       されます。実態として事業に「使用され」かつ「賃金を支払われている」と認められれ
       ば労働基準法上の「労働者」です。「労働者」という事になれば、残業代を請求出来る
       事になります。残業手当だけでなく労働関係の実態を把握し、より働きやすい職場に
       改善する為にも、的確なアドバイスを受ける事をお勧めします。きっと今まで気付かな
       かった事が分かるでしょう。


  2.求人募集

    問、   「社保完備、基本給18万円〜25万円」の求人票を見て応募し採用されました。
        正社員という話でしたが、入社後「パートで採用した」と言われました。社会保険には入って
        もらえず、賃金も時間給計算(@900円)で支払われています。納得できません。
        どうしたらよいでしょうか。

    答、   求人票記載の労働条件は原則として労働契約の内容になります。労働条件が事実        と相違する場合には、使用者に対し求人票に明示された通りの労働条件の履行を要        求できます。労働契約の締結に際して、賃金・労働時間・その他の労働条件を書面で        の明示義務を果たさずに、求人票のみでなされ、労働者が就労すると、求人広告と労        働条件が異なっていた場合は、即時、解除権を行使できますが、長期にわたり、その        条件下で異議申し立てせずに労働している場合には、その事実が契約内容になった        ものと考えられます。したがって、じじつが相違していると気付いた場合は、早めのご        相談をお勧めします。尚、労働条件は明示されなくとも、黙示の合意、法令や労働協         約、就業規則によって決まるので、その点も注意してください。

  3.内定取消し・自宅待機

    問、   就職試験を受け採用内定をもらって入社を待つばかりになっていました。入社1ヵ月前
        になってから、急に、「業績がかんばしくない。申し訳ないが入社を辞退してもらいたい」と
        言われました。納得できませんが、どうすればいいでしょうか。また、「自宅待機してもらい
        たい」と言われた時は、どうすればいいでしょうか。

    答、  採用の取消しは、客観的に合理的で社会通念上相当として認める事由がある場合に       限られます。単に「業績がかんばしくない」というだけでは、採用内定取消しはできませ        ん。こうした、ずさんな採用計画を立てるような会社に入社しても仕方がないと考えると       きは、損害賠償の支払いと引換えに採用取消しに応じて、退社する場合があります。自       宅待機を申し出てきた場合は、自宅待機中の賃金全額を請求することが出来ます。休       業補償分(平均賃金の60%)しか補償しない会社も見受けられますが、民事上、会社        が労働者の労働義務を免除したと考えられますので、民法上、賃金全額の支払いの義       務が生じます。当然、会社側との話し合いが必要とされますので、ご相談ください。

  4.試用期間

    問、   6ヵ月の試用期間の満了の前日に「試用期間を6ヵ月延長する」と言われました。
        また、試用期間ということで、賃金も時間給になっているほか、雇用保険・社会保険にも加
        入していません。そんな事が許されるのでしょうか。

    答、  労働者を採用する場合、通常1ヵ月から6ヵ月の基礎的な教育訓練を行うと共に、労       働者の職務遂行能力や適格性を判断する為に設けられる期間を試用期間と言います。
       労働契約や就業規則等に定めがないときは、合法的理由のない一方的な試用期間の       延長は認められません。試用期間中の給料も労働契約や就業規則等で明らかにされて       おらず、給料明細を見てはじめて時間給であることが分かった場合は、最初から月給制       による賃金の支払いを請求できます。試用期間中であっても本採用と同じ労働契約が        成立しています。したがって、試用期間中という理由での社会保険への加入を行わない       取扱いも出来ません。社会保険事務所等の要請することが得策でしょう。


  5.就業規則

    問、   会社に就業規則があるらしいのですが、誰も見た者はいません。また、労働基準局にも
        届けていないようです。上司と仕事の進め方をめぐり口論になったところ、就業規則21条に
        基づき懲戒解雇するとの通知が来ました。こんなのありですか。

    答、  就業規則は、従業員に以下の様に周知させる。@常時、各作業場の見やすい場所へ       掲示し、また、備え付ける。A書面を労働者に交付する事。B磁器デスク等に記録し、       かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置するために        は、就業規則にその事由と手段を定めることが必要ですが、その前提として就業規則        が有効に成立していなければなりません。意見聴取、労働者への周知、監督官庁への       届け出のいずれが欠けても、就業規則としての効力に欠けます。就業規則の周知が欠       け、労働基準監督署に届けていない就業規則などは問題外です。

  6.始末書の提出 

    問、   会社から「遅刻が多いので始末書を提出するように」と求められています。書かないとま
        ずいでしょうか。また、約束したノルマを達成できなかったので、始末書を出せと言われた場
        合はどうなるでしょうか。

    答、  始末書は、就業規則違反を反省し、将来再発しない誓約する内容のものです。
       そうした始末書を提出した場合、再び、同一の就業規則違反に及んだとき、反省が不十       分で、誓約を破ったことになり、より重い処分が下される可能性が大きいでしょう。始末       書提出命令は労働者の意思に委ねられ、その提出を懲戒処分によって強制することは       できません。
        したがって、あえて始末書を書く必要がないでしょう。今回の場合、むしろ、遅刻が多        いことが問題でしょう。今後も遅刻を繰り返すようであれば、始末書の提出如何にかか       わらず、より重い処分が下されることは必至です。遅刻の原因が心身の問題や、家庭        の事情であれば治療を受け診断書を提出して、出勤・退社時間の調整を会社と交渉す       ることが必要でしょう。
        ノルマが達成出来なかった場合の始末書の提出は、それ自身、なんら就業規則違反       でないので、始末書を提出する必要はないと考えられます。


  7.定年制

    問、   会社は、06年4月から60歳定年退職者を65歳まで再雇用者として雇用を延長する制
        度を導入しましたが、再雇用される人は、会社のお気に入りの人だけです。
        このような制度は良いのでしょうか。

    答、  高年齢者雇用安定法が2004年に改正され、65歳未満の定年を定めている事業主       に対して、65歳までの雇用確保措置を義務づけました。しかし、原則として過半数組合       もしくは、過半数代表との間で労使協定を結ばなければなりません。協定を結ぶ場合、       協議に対する会社の努力の有無も必要となり、「会社が気に入った人」などの基準は具       体的かつ客観的基準とは到底いえないので認められないことは明らかです。したがって       、会社との交渉は、具体的で客観的な基準での労使協定を締結する事が必要です。 

  8.退職と解雇

    問、   仕事の進め方を巡って口論し、「俺の言うことが聞けないのならやめろ」と言われ会社を
        辞めました。その後、解雇手当を要求したところ、「解雇したつもりはない」と言われました。
        どうすればいいでしょうか。

    答、   解雇か、合意解雇か、退職か、いずれに当たるのかは、事情を詳しく聞いた上で判断し
        たいと思います。就業規則に退職及び解雇についての規定があると思います。「辞めろ」と
        言われた場合でも状況が考えられます。強く叱責しながら「辞めろ」と言い、あなたが自ら身
        を引かざるを得なくなるよう追い込まれたのであれば、「わかりました」と言っても、「辞めろ」
        と言ったこと自体が解雇通告になります。また、口癖のように「辞めろ」と言われていて、自
        分から決断したのであれば退職になります。たとえば、飲み会などでの一時的な感情で意思
        表示した場合は無効とされ、懲戒解雇になると誤診して意思表示した場合や、長時間上司
        に取り囲まれて辞めると言わなければ解放されなかったような場合は、詐欺や強迫による
        意思表示として取り消しになります。とにかく解雇の理由をはっきりさせ、あらゆる解雇事由
        に精通している私達にご相談ください。


  9. 賃金不払
     
     問、  会社が賃金を支払ってくれない場合の対処方法を教えてください。

    答、  賃金は、労働基準法第11条にて、
        「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他名称を問わず、労働の代償として使用者       が労働者に支払うすべてのものをいい、恩恵的給付、慶弔給付は含まれない。」と定義       されています。賃金不払の場合、使用者は労働基準法第24条違反として、30万円以        下の罰金を科されます。
        賃金不払の解決には、まず債権となるべき金額を確定しておくことが重要です。また、       解決方法には、行政機関の利用から裁判所での判決まで、様々な方法があり、それぞ       れの特徴をつかんでおくことが有効です。一番早い解決方法は、労働者が使用者と話し       合って支払ってもらう方法ですが、退職したときに嫌がらせを受けたりした場合は、個人       での話し合いは非常に困難となるでしょう。こうした場合、個人加盟できる私達のような       労働組合にご相談いただければ、加入と同時にあらゆる方法で解決を目指し最後まで       バックアップすることをお約束いたします。行政機関、裁判所機関での解決にも最大限       のご協力をいたします。

     一人で悩まず、まずはご相談ください。


        
        
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