先日、新宿コマ劇場で、桜田淳子主演のミュージカル「ア二ーよ銃をとれ」を見た。
実はこのミュージカルは、十六年前に、江利チエミ嬢が同じコマ劇場で初演しており、その時に小生は音楽監督、女房は歌詞の日本語作りを担当した関係から、非常に興味をもって観劇した。
このミュージカルは、アメリカのミュージカルとしては古典に属するもので、ミュージカルというよりオペレッタに近い。
ブロードウェーにおける初演は一九四六年というから、三十四年前で、その後改良を加えて十四年前に再演している。途中で映画化され、ベティ・ハットンの名演技で世界的に有名になり、数々の劇中歌がヒット曲となった。
舞台ではエセル・マーマンという名女優が演じて有名なのだが、十四年前、再演したときに彼女は五十七歳というから驚く。
この映画に主演したべティ・ハットンも最近ブロードウェーに復帰し、孤児院の院長役で出演しているが、これまた五十九歳というから驚く。
こうして考えてみると、江利チエミ嬢も負けずに頭襲ってほしいと心から願う。
さて、十六年前の江利嬢のものと、今回の桜田嬢のものを比べてみて二つのことに気づく。
その一つはミュージカルというものが、経済的に非常に苦しい条件に追い込まれてきている、ということである。伴奏のためのオーケストラ楽団が、このミュージカルでも最低三十人は必要であろう。もし三十人を使用すれば一日・百万円以上かかり、音楽的に満足しようとすれば連日二百万円以上はかかる。とても現状の入場料では採算がとれないであろうということである。
次に、日本人の古典に対する観念が、歌舞伎などに対しては愛着を持つのだが、ミュージカルには歴史がないために、理解しにくいということである。しかしこれらの困難をさまざまの知恵で切り抜けてゆくことが必要であり、そういう意味で今回の「アニーよ銃をとれ」の上演関係者には敬意を表する。
主演の桜田淳子嬢は、線は細いが実に立派な演技であり、江利嬢に優るとも劣らないすばらしいものであったことも、付け加えておかなけれはならない。
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