新しいミュージカルスターが誕生した。プロードウェー・ミュージカル「アニーよ銃をとれ」(東京・新宿コマ劇場)の主役アニー・オークリーを演じている桜田淳子である。
南北戦争直後のアメリカ・オハイオ州の町にバッファロー・ビルが率いる射撃ショーの一座がやってくる。一座の花形射手フランク・バトラー(あおい輝彦)が、地元の名手と腕くらべすることになるが、その相手になったのが、薄汚れた田舎娘のアニー・オークリー(桜田淳子)だった。アニーが試合に勝ち、一座に加わる。アニーはフランクを一目見たときから好きになる。
ブロードウェーで一九四六年から三年間ロングランしたときは、エセル・マーマンが主演した。映画は五〇年にべテイ・ハットンのアニーで製作され、日本でも公開されている。
このような名作に、ミュ.ージカル初出濱の桜田淳子がどこまでやれるのか、見るまでは多少の不安があった。それが序幕で、鳥を腰にぶらさげ、おんぼろの姿で銃を手に登場、田舎なまりのせりふをしゃべり始めた途端に、彼女に対する心配は消し飛んだ。桜田は「自然のままに」を生き生きと歌い、おめずおくせずのびのびと演じ、楽しげに踊る。
このミュージカルは、アニーによって舞台成果が左右されるだけに、桜田の活躍は高く評価されよう。
昨年東宝歌舞伎の「おはん長石衛門」で初舞台を踏み、長谷川一夫に徹底的に教え込まれた。これがかなりプラスになっている。
山口百恵、森昌子と同じ高一トリオとはやされたが、淳子は一歩遅れをとっている。百恵が引退した時期に淳子はミュージカルスターとして脚光を浴び始めた。
今度の成功によって「マイ・フェア・レディ」や「グリース」など、淳子がやれそうなブロードウェー・ミュージカルがたくさんありそうだ。テレビ出演を控えて歌やダンスの特訓を受けてきた淳子の真剣な姿勢が今回の成功につながったようだ。
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