"My Pure Lady" Junko Sakurada

桜田淳子出演 舞台

「楡家のひとびと」(東京宝塚劇場)

 

「パンフレット」より

楡家の人びと(東京宝塚劇場)

女優として、こんなに見事に成長しつつある人は珍しい。

 

千野幸一(日刊スポーツ編集センター)
 女優として、こんなに見事に成長しつつある人は珍しい。
 先日、何の気もなしに見たNHKの「生活笑百科」という法律相談バラエティー番組で、上沼恵美子、桂ざこばといった口八丁の人達の中に入って、二人に負ユーモアも加えて意見を述べる素顔の桜田の堂々とした姿が、すっかり大人の女優のムードを煙もじているのに驚いた。
 桜田のように、アイドル歌手のイメージをきっぱりと拭い去って見せた人もいないのではないだろうか。
 東宝演劇の財産の一つと言える「細雪」の、初演からの持ち役である四女妙子の、つややかな女優としての感性を知ると、この人はやはり女優の道を選んでよかったとつくづく思う。
 芸術選奨新人賞をはじめ、いくつもの大きな賞を授賞しているのも当然だ。
 その上、八八年の日ソ合作映画「オーロラの下で」に続き、今年は日中合作映画「曼茶羅」に主演するなど、今や国際女優としての評価も十分だ。
 東宝系の舞台では八六年「エドの舞踏会」のマダム貞奴、八八年「女坂」の由美など、いい舞台をいくつも残しているが、新しいジャンルへの挑戦にも意欲的で、奇才野田秀樹の演出で八六年にシェイクスピアの「十二夜」にオリヴィア姫を演じたのをきっかけに、八九年には同じく野田演出「国性爺合戦」に出演し、ゆう姫と乞食女オナカの二役を演じ、野田の世界に見事に融け込んでいた。
 桜田淳子は、いま、輝いている。


 
北 杜夫=原作
堀越 真=脚本
杉田成道=演出
楡家の人びと
 
平成三年五月 三日−平成三年五月三十日
 

●スタッフ●
装  置  石井強司
照  明  原田 保
音  楽  堀井勝美
振  付  水品 崇
衣  裳  宇野善子
音  響  高橋 巖
 
演 出 補  滝澤辰也
 
演出助手  矢野 学
       小島 靖
       北山英明
       砂川幸子
 
製  作  田口豪孝
       宮崎紀夫
 
協  力 フジテレビジョン

●出演者●
楡 龍子:八千草   薫
      *
楡 桃子:桜 田 淳 子
      *
楡 聖子:酒 井 和歌子
      *
楡 徹吉:小 坂 一 也
      *
院代・勝俣秀吉:仲  恭  司
佐々木康三郎 :  佐古 雅誉
高柳 四郎  :  渕野 直幸
  
能五郎(看護人) :  角間  進
高 砂(患者):  樫原 哲也
写真屋 :  田村 勝彦
  :  
ビリケン(〃):  外山 誠二
患 者 :  岡本 敏明
赤 井(選挙参謀):  大林 隆介
      *
黒 田(選挙参謀):深 江 章 喜
青 木(選挙参謀):  片山 洋右
七 輪(患者):  吉田 光一
医 者 :  鈴木 昭生
  *  
小橋 宏明・田中 直光・前田 和守・永田 隆生
木高 一成・岡部 和泰・斉藤  丞・和田 政宗
 *
女中イネ:菅野 園子
“ ツネ:棟形 寿恵
“ カネ:田嶋 佳子
紙縒(患者):芝村 洋子
    :   
島田さつき(〃) :平井太佳子
ソプラノ( 〃 V :堀江真知子
患 者 :長谷川真莉 
看 護 婦 :飯岡真奈美
      *   
竹尾 美紀・春菜 亜紅・津田 佳奈・桜木 星子
柚木 玲子・山田 華子・北川亜希子
 *
佐藤 博昭・破我 直義・小松  伸・羽田野大典
仲沢 克格・山下 大介・田中 靖浩・中野 真伴
 *
笠原 靖元・小原 和哉
神田 哲志・吉田  亮/山本  完・山本  純
  浅倉 知佐・高橋 正弓
      *
下田 ナオ  :渡 辺 えり子
      *   
楡 基一郎  :小 林 桂 樹

 

《あらすじ》
 屋根に費える七つの塔、真ん中に時計台、東京青山の楡帝国脳病院、この病院の前庭でワルツを楽しそうに踊る人々のシルエット。踊っているのは実は入院患者である。
 時は大正八年春、物語はここから始まる。患者がワルツを踊っているのは、院長楡基一郎が考案したダンス療法のためである。
 楡徹吉は、基一郎の娘龍子と結婚し、楡病院に婿入りした男である。徹吉はどちらかというと風采の上がらない男である。ドイツ留学に行かせてくれるという基一郎との約束も今だに果してもらえないままにいる。それに比べ妻龍子は才気燠発、女子学習院卒業の才女である。大時代的な父基一郎と、学者肌の夫徹吉を陰で支えつつ、女手一つで楡病院を切盛りしているのである。
 龍子には二人の妹がいる。聖子と桃子である。聖子は基一郎のお気に入りで「日本一の
器量よし」とかわいがられている。桃子は大の活動好きで、暇さえあれば活動小屋に入り
浸っている。
 基一郎には変な癖がある。病院の時計台の針を少し進めるのである。時代を先取りする
進取の精神を持とう、というつもりなのだ。
 基一郎は自分に理解できないことがおこった時も時計を進めようとする。時計を進めることによって新しい考えを理解できると思っているのだ。聖子が駆け落ち同然に家を出たときも時計を進め、桃子が親に内緒で男とデーしたことを知ったときも時計の針を進めたのであった。
 大正十年、龍子の口添えでやっと徹吉のドイツ留学が実現し、桃子は親が決めた見ず知らずの男と結婚させられることになる。当時日本はワシントン軍縮会議を契機に軍国主義の第一歩を歩みはじめようとしていた。関東大震災、大平洋戦争と続く時代の荒波に楡病院も否応なく呑み込まれていくのである。
 家を出ていった聖子は夫の佐々木が失業中の身で、苦しい生活の末、結核を思っていた。 死の床に駆けつけた龍子は、息を引きとった聖子の葬儀を楡家で行うとし、佐々木に絶縁を申しでたのであった。
 そんな強引さに耐え切れず今度は桃子が家を飛びだしていった。同じく楡家になじめずにいた夫四郎と一緒に。
 その後楡病院は火災により、七つの塔も、時計台も失ってしまう。基一郎は病院再建を龍子に言い遣し、この世を去ってしまった。
 時計台を失い、その針を進める父基一郎を失ってしまい、途方に暮れる龍子であったが、
固く病院再建を決意するのであった。
 しかし日本はひたすら戦争への道をまっしぐらに突き進んでいこうとしていた。



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