"My Pure Lady" Junko Sakurada

桜田淳子出演 舞台評

「細雪」(東京宝塚劇場)昭和60年5月公演

「週刊大衆」劇評

「細雪」(東京宝塚劇場)

すべてが好演だが、今回は特に桜田と大和田の大進境をほめたい。

 

 

 昨年二月に上演したばかりだが、早くも好評再演=B

 淡島千景、新珠三千代、遙くらら、桜田淳子の四姉妹が、豪華な衣装を身につけて、それはそれは絢爛たる舞台をつくる。

 着物に見ほれた女客のタメ息が、あちらこちらで聞こえる。目の保養。

 歴史を誇る船場の木綿問屋蒔岡商店。長女鶴子(淡島)が婿を迎えて、婿の辰雄(近藤洋介)が当主。

 次女幸子(新珠)は、貞之介(沢本忠雄)と結婚して芦屋に分家を構えた。

 本家にはおとなしい雪子(遙)と、近代的な妙子(桜田)が嫁入り待ち。

 妙子には貴金属店のボンボン奥畑啓三郎(大和田伸也)という恋人がいるが、三女の雪子が結婚するまでは……と、鶴子は二人の 婚のOKを出さない。

 行動派の妙子はついに、啓三郡と駆け落ちという非常手段に出る。

昭和十二年。のれんを誇った蒔岡商店にも崩壊の時が迫る。

 ラスト、桜の下を歩む四姉妹の姿は圧巻。

 菊田一夫脚本、堀越真潤色、水谷幹夫演出の冴え。

 まさに「桜の園」のイメージ。

 淡島の貫禄、新珠のやわらかさ、遙の存在感、桜田の達者さを含めてすべてが好演だが、今回は特に桜田と大和田の大進境をほめたい。初演時よりはるかに役がふくらんだ。

 ほかに女中のお春をやる菅野園子が、誇張した演技を邪魔にならずに演じていい彩り。必見作。88点。(I)

 


谷崎潤一郎生誕百年記念
東宝5月特別公演
「細雪(ささめゆき)」
谷崎潤一郎=原作、堀越 真=潤色
菊田 一夫=脚本、水谷幹夫=演出
東京宝塚劇場
昭和60年5月4日〜5月31日

スタッフ
 
演 出 補北村 文典
美  術古賀 宏一
照  明沢田 祐二
音  楽橋場  清
効  果佐藤日出夫
振  付今井 栄子
邦楽指導富崎富美代
衣裳考証八代 泰二
衣裳デザイン宇野善子
方言指導桜田千枝子
 
演出助手阿部 照義
 〃  岡本 義次
 〃  滝沢 辰也
 
製  作酒井喜一郎
 〃  田口 豪孝
 

出演者連名
鶴  子(長女)淡島  千景
幸  子(次女)新珠三千代
雪  子(三女)遙   くらら
妙  子(四女)桜田 淳子
 
           *
奥畑啓三郎大和田伸也
板 倉  加納   竜
貞之介(幸子の夫)沢本  忠雄
辰 雌(障子の夫)近藤  洋介
            *
お 久(女中頭)冨田 恵子
戸祭吾肋 丸山 博一
御 牧  児玉 利和
音 吉(蒔岡商店の番頭)安宅  忍
井谷夫人  桜田千枝子

*****
吉田 光一
桃井 政春
小林 茂樹
山田 雅彦
  *
渡瀬由美子
高橋ひとみ
上野 真弓
菅野 園子
河西 陽子
染川 ユリ
高橋志麻子
様形 寿恵
芝村 洋子
*****
楠見彰大郎
風間 信彦
柴田 伸一
原田 和哉
  *
喜多岡照代
原口三知子
山本 晴美
古川 美奈
長屋 千世
平良佐和子
下田千夜子
  *
(劇団若草)
松永真以子
清水千恵子
満田 圭介
山本 竜也
村野 将史
岡田 一就


桜田淳子 プロフィール 

 こいさん*ュ子をやる桜田淳子。
 彼女の達者さは、初演の舞台でも注目の的だった。
 ぼくらちょっと古い世代は、『紬雪』といえば、昭和二十五年の新東宝映画『紬雪』を思い出す。阿部豊監督のこの映画で四姉妹を演じたのは花井闇子、轟夕起子、山根寿子、そして高峰秀子。
 姉たちとは正反対の行動をとり、駆け落ちしたり男を替えたりの近代娘の妙子を演じた高峰は、この映画の事実上の主役だった。
 だから、桜田淳子がどんな妙子をつくろうとするかと、最初から気になった。
 そして、魅力の近代娘を演じているのを親て、さすが桜田淳子と思った。
 歌手としてデビューしてきた彼女の今までの舞台数は、けっして多くはない。
 でも、そのくせ舞台女優としての評価はひどく高いのである。
 それは昭和五十三年の『おはん長右衛門』のおはんの好演(これが初舞台)にはじまり、二本目の舞台『アニーよ銃をとれ』で早くも芸術祭優秀賞をとるという彼女の快進撃に、ほとんどの人が彼女の〃天性”を感じるためだ。
 昨年のミュージカル『リトルショップ・オブ・ホラーズ』でも好演だったし、再演での妙子役の掘り下げよう、観ものの一つといっていいのではないか。
 細雪降りしきる中での満開の桜の姿を親たいものだ。
 
       石崎勝久(芸能評論家)


「昭和60年5月 東京宝塚劇場『細雪』パンフレット」より



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