◇ジカン@チリオモイデバナシデキゴト@チリ◇

=Dias en Chile=

……0727Vina del Mal→Nogales!……

 ここまで来たら早いものである。残り2日…なのに肝心のノガレスが…。AM10:00ビーニャ…〜カレラ市までバスで向かう。途中、春先ということで、目覚めたばかりの緑が美しい。いつもはもっと乾燥していて表情も乏しいらしいが、私にとってはこれがチリの印象。この季節特有なのだろうか…?ガスで靄った平原の中をバスは行く。
 昼頃、1時間くらいでカレラ市到着。教会を覗く。これまでチリで見たどの教会よりもこの土地の人に愛されている存在であるようなスケール感を持っていた。なぜか木で作られた椅子のデザインが目に留まった。素朴なのに、こなれている。この土地の人柄をも表わすのかもしれないと内心嬉しく思った。

 そして、いよいよローカルバスに乗ってノガレスへ!230ペソ…もうこれは「市民の足」感覚の値段である。

 パン・アメリカンハイウェイを通ってやがて停めてもらう。道沿いに何軒か並ぶ家、その一戸に松岡さんはオスマイでした。今週からは看護助手4人が加わっているという。こじんまりした、奥に長い住戸で、パティオ(庭)もある。
 荷物を置いて、松岡さんがいつもお世話になっているというエルミニアおはざんのところへ昼食をとりに行く。おばさんはチリのお母さん!!って感じで皆を包み込むような笑顔で迎えてくれる。心尽しのPastel de Choclo(とうもろこしの粉の生地にオリーブの実やお肉などを入れてオーブンで焼いた料理)にかぼちゃのパン、サラダ、スープ、デザート。どの皿からも「あったかい愛」がこぼれ落ちてきそうだ。何ていうのかこういうのが一番嬉しい。

 やがてノガレス市役所見学。ノガレス市は、25km四方の面積に2万人が住み、大半の人は農牧業に携わっているという。JOCVの松岡さんに求められた仕事は「都市計画」。彼がどういう所でどんな仕事をしているのか、話を聞いていれば凡そ分かるものだが、百聞は一見にしかずである。

 市役所の中でこれまで計画したメロン広場や、貧困者住宅プロジェクトの概要について説明して頂く。
 しばらくお話を伺った後、車で市内を回る。森の中に建つ小さな教会、郊外にある典型的な民家…彼が設計したというエルメロンの体育館で車を降りて歩いて回ることにする。設計と監理の問題はやっぱりどこにいても難しいもんだよね。それでもこの場合の理不尽なところは、察するのは容易だがホントはどんなにアゼンとしたことか…。どう言ってよいものやら。それは、何の慰めにもならないなぁとも思った。私はとことん無力なのである。そして、貧困者住宅へと…。必要最小限として与えられた住居には殆どの場合自分たちの住み良いように手が加えられていた。自由に増改築された家々の表情から、ごくごくありのままに、上を見るわけでも下を見るわけでもない暮らしが容易に想像できた。のびのび生きている…何の根拠もないけれどそう思わせるような、イイ顔をしている家を見ると何だかこちらまで嬉しくなった。

 今まで建築とか家とか、そういうものをごく難しく考えすぎていたように思う。チリで出会った建造物はどれもリラックスして肩の力を抜いた印象。それでいて拍子抜けがないのである。このままでいいんだよっていうキャパシティーのあるチリの人達の気質そのもの。

 この旅の間、チレーノ・チレーナの気質とか性格について何度も何度も松岡さんに尋ねたような気がする。総じてそれは「穏やか」である。私からすれば松岡さん自身もそういったところは吸収され、チレーノ化しているのではないかと思った(笑)

 異国から押しかけてきた私をすんなり迎え入れてくれる松岡さん。彼の任務地をほんの1日で見るってのはハードだったけど、エルミニアおばさんの笑顔とか、段ボールで出来たエルメロンの模型とかを見ているうちに、これこそ松岡さんがこの1年8カ月かけて築いてきたモノ・時間・空間…流れ…なんだなぁと.....。

 ノガレスにも夕暮れはやってくる。紅に染まった峰に感銘していると、松岡さんは特別でもなさそうな様子だった。いつもこんな夕暮れらしい。1日のうちほんの数分だけ訪れるマジックアワー。彼にとってそれはもう生活の一部なのだった。急速に暗さが増していく。静かな小さなまちの夕暮れ。

 平たいパンに特製アボガド・ペースト、あったかい紅茶を入れて夕餉(オンセ?)である。任国外旅行の話、昔なさっていたオシゴトのこと、南米の建築に関する資料などなどを肴に…!デザートはチリモヤというトロピカルで香り高いフルーツ!そして、ノガレスの夜はしーんと冷えていく。

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